星川あさこ個展 ファンタジーホスピタル

会期|
2020.7.23-7.31(水曜日は休廊)
時間|
15:00-20:00
場所|
パープルームギャラリー
企画|
パープルーム (梅津庸一)
協力|
パープルーム予備校

本展について



星川あさこという作家を端的に説明するのは非常に難しい。しいて言うならば星川あさこは文芸、音楽、造形の合流地点でものをつくる人と言えるだろう。
星川はジャンルの違う複数の活動領域を横断し、時に交差させながら活動している。星川の活動をいくつか挙げると、絵画、ドローイング、刺繍、陶芸、ライトノベルの執筆と登場キャラクター(朝野メロン)のデザイン、しずくだうみの楽曲「あじさい」のMV制作、と枚挙にいとまがない。
また星川の作品には頻繁にキャラクターが登場するがそのほとんどが星川自身の自画像である。星川作品におけるキャラクターはゼロ年代に数多く出現した「キャラ絵」とは根本的に異なる。どちらかと言えば、竹久夢二や雑誌『花とゆめ』の初期に通ずる叙情性を漂わせているのが特徴だ。しかし星川の描くキャラクターは常に一定ではない。輪郭線が溶けほとんど抽象的な形態になったり、細胞組織に還元されてしまうことさえある。また星川が作品の中でしばしば自身を拡大・縮小あるいは分裂・増殖させる背景には粘菌やきのこへの強い関心がある。ちなみに、きのこグッズを制作し百貨店の催事や商店街の文化祭で販売する活動も継続中だ。
星川の活動は一見すると取り留めがなく、一貫性がないように見えるかもしれない。しかしそれは星川の創作活動が特定の「業界」のために向けられたものではないためだろう。星川の表現は様々なあらわれ方をするが、その中心には常に「実存」と「喪失」への強い執着がある。

本展は星川あさこの近年の活動を紹介するものである。病室を模した空間の中央にはベッドに横たわる星川の人形と星川自身をモチーフにしたミニチュア100体、そのまわりに平面作品約40点が配される。
先日、日本橋三越で開催された「フル・フロンタル 裸のサーキュレイター展」では星川の作品が1950年代後半の日本の「アンフォルメル」の作家たちとともに展示された。そこでは星川の作品が美術史に規定されない「不定形の炎症」として存在し、菅井汲や今井俊満の作品を凌駕する強度を誇っていた。星川の絵画作品の物質的強度は表面をえぐるようなスクラッチ、火で炙る、レリーフのように絵の具やシリコン樹脂を盛る、などによって獲得されるが、たんに物質感が強調されているわけではない。星川作品における「物質」はSFあるいは文学的感受性を経由することでこの世のものとは思えない「得体の知れなさ」を帯びる。
本展では「フル・フロンタル展」の出展作品と同時期に制作されたおびただしい数の作品群が網羅的に展示される。

パープルームが星川を知ったきっかけはTwitterだった。その後「ゲルゲル祭」(2016年)に参加してもらった。ゲルゲル祭とは当時パープルーム予備校生だった智輝の自宅「パープルームプーポンポン」で開催された展覧会である。(現在までゲルゲル祭は6回開催されている)ゲルゲル祭はインターネット上で遭遇した有象無象、いわば「ゲル状」の表現を集めた企画だった。
今思えば、インターネットの世界にも伸びていた星川の粘菌にわたしたちの方が捕らえられてしまったのかもしれない。そしてそれは「粘菌」と「花粉」の出会いでもあった。


パープルーム(梅津庸一)







作家のプロフィール

星川あさこ Asako Hoshikawa


1984年広島生まれ岐阜育ち
  東京在住

【個展】

2014年「麻と菌のつぶつぶ展」喫茶デシベル(名古屋)麻名義
「たぶん、本棚」吉祥寺YORU2階(東京)

2016年 「スペース変形菌」スペースたのしい(名古屋)
「セイント☆菌類展」spazio rita(名古屋)
「SF菌類展」高円寺pocke(東京)

2020年 「ファンタジーホスピタル」パープルームギャラリー(相模原)

【グループ展やその他いろいろ】

2007年 公園で白い丸いものを発見し、これはなんだろうかと思ったらきのこできのこへの興味がわく。多いときには週5で山に通うようになる。

2011年 京都の音楽専門店Meditationsを知り、すきな音楽が増える。
そこで働く舘脇悠介の存在を知り、尊敬する。

2012年 星川あさこのツイッターアカウントをつくる。

2013年 「きのこフェスティバル」名鉄百貨店一宮店(愛知)麻名義
「ふくろ展」ギャラリー悠玄(東京)麻名義
「秋のきのこ文化祭in河原町アートの日」河原町商店街(熊本)麻名義
年始頃から名古屋のクラブでいつも遊ぶようになり、知り合いが増える。
わたしのブログを読んでいてくれた方から百貨店のきのこの催事に参加しないかというお誘いがあり、たくさんのきのこ作品を作り、参加する。以降そのつながりできのこ作品のイベント、催事に参加するようになる。

2014年「ニョキッとキノコ雑貨市」近鉄百貨店上本町店(大阪)麻名義
「春の雑貨祭り展」spazio rita(名古屋)麻名義
「gifuエキナカアートフェスタ」JR岐阜駅(岐阜)麻名義
「ドキドキ!きのこフェスティバル」阪神梅田本店(大阪)2015,2016年にも参加。麻名義
東京で個展をやったことにより、東京の星川あさこ名義のツイッターの知り合いと数多く会う。
また、京都で行われたネットストーキング検定というイベントにて、関西の星川あさこ名義のツイッターの知り合いのも数多く会う。ツイッターを通じてすきだった、The World Will Tear Us Apartというバンドのメンバーたちとも会い、ライブに通うようになる。
SSWしずくだうみの「あじさい」という曲のMVを作る。

2015年「きのこにあ」Gallery Cafe*Kirin*(大阪)麻名義
「フクオカきのこ大祭」福岡縣護国神社 参集殿(福岡)2016,2018にも参加 麻名義
「いきもにあ」みやこめっせ(京都)2018にも参加 麻名義
しらいしののこ・麻二人展「あさのこ展」ギャラリーイロ(東京)麻名義
車の音楽環境がカセットテープだったり、カセットテープで音源を出しているアーティストに興味を持つ。
そこで、現夫のDirty Dirt戸田がカセットテープの神様のような存在ということを知り、彼がカセットテープについて書いたZineをネット販売してもらい、読み、尊敬する。
ツイッターで見ていて音楽や絵がすきなしー没というアーティストが個展をやっているときちょうど東京に行く用事があったため、見に行く。展示していた高円寺pockeではじめてしー没に会い、同時にしー没の展示のクロージングイベントにDJとして出演するため挨拶にきたDirtyDirt戸田にはじめて会う。クロージングイベントでは戸田のDJ、しー没のティッシュによるパフォーマンスのノイズのライブ、画家の箕浦健太郎やアーティストの荒井優作のライブなどを聴き、盛り上がる。年末にはツイッターを通じて仲良くなったらるぷりや戸田が参加するイベントFalusに遊びに行き、尊敬していた京都のMeditationsで働く舘脇悠介とはじめて会い感激する。

2016年 肝臓を悪くし入院する。
「ゲルゲル祭2016」パープルームプーポンポン(相模原)
高円寺pocketで個展をしていて岐阜に帰るタイミングでパープルームという団体が行うゲルゲル祭というイベントに参加しないかというお誘いをいただき、参加する。それ以来パープルーム関連の展示にいろいろ参加させていただく。ゲルゲル祭の頃カセットテープを通じて知りあったDirty Dirt戸田と交際をはじめ、岐阜を出て東京の戸田の家に居候する。

2017年 「富士山展β」AWAJI Cafe & Gallery(東京)
「恋せよ乙女!パープルーム大学と梅津庸一の構想画」ワタリウム美術館(東京)
「パープルームの夏休み」NADiff Gallery(東京)
戸田と結婚し、広い部屋に引っ越す。そこで友だちや友だちの友だちなどを自由に呼んで飲み食いするナハレパーティという集まりを定期的におこなうようになる。

2018年 「富士山展1.0 ―来たるべき未来のために―」AWAJI Cafe & Gallery(東京)
「スモールアニマルと森のいきもの展」阪神梅田本店(大阪)麻名義
「癒やしのうさぎ&きのこガーデン」ジェイアール京都伊勢丹(京都)麻名義
「パープルーム大学附属ミュージアムのヘルスケア」茨城県常陸太田市郷土資料館梅津会館(茨城)
「パープルタウンでパープリスム」パープルタウン(相模原)
秋にアメリカから来たgouax,boglin,hayesという友だちと日本のいろいろなところを半月ほど旅する。しー没が彼らと仲良くなったことによりわたしもしー没とも仲良くなり、二人で展示することを決める。
ツイッターで知っていてすきだったんミィバンドのライブをはじめて見て感激する。

2019 年しー没+星川あさこ「We welcome you」高円寺pocke(東京)
「オオサカきのこ大祭」京セラドーム(大阪)麻名義

2020年 「梅津庸一キュレーション展 フル・フロンタル 裸のサーキュレイター」日本橋三越本店 MITSUKOSHI CONTEMPORARY GALLERY(東京)