CURRENT EXHIBITION
ダイエー海老名店を銘記するための展覧会 空地のラプソディ
- 会期|
- 2026年2月22日(日)ー 3月29日(日)
※休廊日…月・火曜日、2月28日(土)は館の新会社への移行のため19時閉店となります。 - 時間|
- 12:00 - 20:00
- 場所|
- パープルームギャラリー(ダイエー海老名店 2階)
- 企画|
- 梅津庸一
- 協力|
- Kawara Printmaking Laboratory, Inc./ 株式会社金盛社
周知の通り、2026年2月25日をもってダイエー海老名店は41年間の歴史に幕を下ろします。
パープルームギャラリーは昨年の8月にオープンしたばかりの新規テナントですがダイエーの専門店街で営業した半年はわたしたちにとって特別な時間でした。いきなり運営側の話で恐縮ですが通用口から出勤し、バックヤードを抜けて売り場に出ると不思議と気持ちが切り替わります。40にも及ぶ多種多様な業種の店舗が軒を連ねることでフードコートや専門店街は形成されています。その仲間にいれていただけたことがとにかく嬉しく、これこそがわたしたちにとっての社会性の芽生えでした。それは美術というジャンルが社会の中でいかに特殊か、という事実と向き合うことでもありました。一概には言えないものの、美術も本来であれば客商売のひとつです。けれども、昨今の美術は「より良い社会へ」を口実に助成金をはじめとする支援や見返りのない応援を前提としすぎている傾向があり浮世離れしているのが現状です。
1ヶ月ほど前からダイエーの入り口にはお客さまのダイエーに対する思いを綴った寄せ書きパネルが展開されており、日に日にパネルは増設されていきました。お客さまのメッセージを拝見してこの館がたんなるショッピングセンターではなく、それぞれの生活や思い出のシーンと分かちがたく結びついていることを再確認しました。そんな数々のメッセージに感化されダイエーとのお別れ会としての展覧会を急ごしらえで準備しました。
美術はものごとを記録・記憶することに向いていると言われてきました。昨今では美術の世界も消費のスピードが加速しその限りではないかもしれませんが。それでも本展を通してありし日のダイエーをみなさまの心に刻みたいと。準備期間こそ短いものの、美術の持つ遅効性を念頭におき、ゆったりとした時間が流れる展覧会を目指しました。
本展の出品作である尾関立子の幅3メートルにおよぶ空地を描いた《Vacant lot》は海老名の原風景を彷彿とさせます。本作は繊維が細く滑らかでありながら丈夫な三椏紙に刷った24枚の銅版画を継ぎ合わせた作品で、よく見ると数種類の図柄が反復して用いられていることに気がつきます。とはいえ、それぞれの版にはたいへん深い腐食が施されており、版画における印刷技術としての再現性はあらかじめ遠ざけられています。
空地はたしかに寂しさを掻き立てますが、けっして何もないわけではありません。本作の空地には草花たちが生い茂り、むしろ活力に溢れた凄まじい空間が展開されていると言えるでしょう。
ところでタイトルの「ラプソディ」は複数の曲調が混在し、メドレーのように繋がった自由奔放な楽曲の形式のことです。僕がグループ展を組む際に厳密な意味でないにせよ常に意識している手法のひとつです。ちなみに2001年にv系バンドRaphaelがリリースしたラストシングル『秋風の狂詩曲』をお手本にしています。
展覧会づくりには様々なやり方がありますが、本展ではとりわけ素朴かつ愚直なキュレーションを心がけました。この期に及んで現代美術特有の小賢しいゲームに興じている余裕などないからです。
なお、本展にはパープルームギャラリー店長の梅津庸一、副店長の安藤裕美、神奈川県立海老名高等学校出身で現在は町田で版画工房カワラボを営む河原正弘、パープルームギャラリーの2軒先の写真スタジオで成人式の撮影をした海老名在住の卜部鈴木など海老名ゆかりの作家も多数参加しています。
月並みな言い方になってしまいますが、ダイエー海老名店のパープルームギャラリーの最後にふさわしい狂詩曲をお届けしたいと思います。
みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。
梅津庸一(美術家、パープルームギャラリー店長)
安藤裕美
梅津庸一
卜部鈴木
河原正弘
今泉奏
田内泰生
松岡日菜子
渡邉早貴
尾関立子
折登朱実