常設展
- 会期|
- 2020.4.28-5.5(水・木曜日は休廊)
- 時間|
- 15:00-20:00
- 場所|
- パープルームギャラリー
- 企画|
- パープルーム
- 協力|
- パープルーム予備校
本展はパープルームギャラリーにおける初の常設展だ。
パープルームメンバーの新作や近作に加え、パープルームギャラリーで過去2回の個展を開催した松澤宥の初期ドローイングも展示する。パープルームギャラリーは開廊して1年以上が経つが、これまで様々な切り口で「美術なるもの」に切り込んできたつもりだ。
常設展とは一般的にギャラリーや美術館において、いつでも観ることができる定番の展覧会の形式のことを指す。しかし、常設展は「常」に同じように「設えられている」わけではなく、美術館の学芸員やギャラリーのディレクターによってその時々の時流やテーマ設定が反映され組織される。趣向を凝らした企画展示と比べて常設展は地味で平凡だという意見もあるだろうが、「キュレーション」が前景化しない常設展こそが作品と対峙するのには適しているとも言えるのではないか。
しかし現在、コロナ禍の状況下においては展覧会という形式自体が非常に難しいものになってしまった。わたしたちパープルームギャラリーもいくつかの予定していた展覧会が延期になり、休廊を余儀なくされた。パープルーム予備校の近所の飲食店も軒並み客足が遠のき、危機的状況にある。
パープルーム予備校生のわきもとさきの勤め先であるファミリーレストランも例外ではなく、夜間営業が急に廃止されるなど、その影響は身近なところだけを見ても甚大だ。夜勤専門だったわきもとは収入がなくなり、来月のアパートの部屋(パープルーム1 3/4という名称)の家賃の支払いが困難な状況に追いやられている。このファミリーレストランはわきもとの職場であるだけではなく、パープルームメンバーにとっても馴染み深い場所だ。夜な夜な集まり、多くの時間をここで過ごしてきた。
安藤裕美は深夜の客のいないファミレスの店内を油彩によって記録した。それは1929年のニューヨーク株式市場の株価大暴落後のアメリカの生活を描いたエドワード・ホッパーを想起させる。
「一人暮らし」を主題に制作と生活を重ね合わせる、わきもとさきのコラージュ作品《労働ちゃんとわたしのおうち》(2020年)には職場の制服の端切れや自室の塵が貼り付けられており、労働と生活の関係が示唆されている。
梅津庸一の《花粉濾し器》(2019-2020年)は空気中を漂う花粉や瘴気を濾すフィルターをオブジェ化した陶芸作品だ。実際の生活の中ではなく、思考の中で使う民芸品とでも言えるかもしれない。
自身がキャラクターであると自認するシエニーチュアンは自動筆記を援用した「ポスト・キャラアイコン絵画」を提示する。シエニーチュアンの絵画が見据えるのは記号でも肉のようなボリュームでもなく「見えない気配」である。
ボードゲームデザイナーとしても知られるアランは「ルーチンワーク」をテーマにしたオブジェ《サード・プレイス》を制作中だ。
日本概念派の始祖、松澤宥の1950年代の「日の丸構図」のドローイングは「不定形の炎症」とも言うべきもので、日本におけるアンフォルメル受容についても考えさせられる。
ここで多くは語らないが、わたしたちは細心の注意を払いながら常設展という展覧会の形式にたんたんと取り組みたいと思う。制作と生活、そして美術という営みについて声高に表明するのではなく、わたしたちは静かにひっそりと常設展を開くことにした。
2020年4月13日、相模原にて。パープルーム(梅津庸一)
梅津庸一 1982年山形県生まれ
安藤裕美 1994年東京都生まれ
シエニーチュアン 1994年愛知県生まれ
わきもとさき 1994年東京都生まれ
アラン 1991年鳥取生まれ
松澤宥 1922年長野県生まれ